使っていないサービスに毎月払っていませんか?中小企業のIT契約を棚卸しする方法
カード明細に、毎月同じサービス名が並んでいる。「これは何に使っているのか」と聞いても、すぐに答えられる人がいない。必要なサービスだと分かっても、何人分を契約しているかまでは把握できていない。
そんなときは、支払いを止める前に、契約内容・実際の利用者・請求対象を突き合わせることから始めましょう。
サービスそのものが不要な場合もあれば、契約人数や料金プランを見直すだけでよい場合もあります。費用の大小だけで判断せず、今の業務に必要な契約かを確かめることが大切です。
なぜ、使い道の分からない契約が残るのか
ITサービスは、必要になったときに契約する一方で、見直す時期が決まっていないと、そのまま支払いが続きやすくなります。
例えば、次のようなケースです。
- 一つの案件で使うために契約し、案件終了後も更新されている
- 退職した社員のアカウントが、課金対象のまま残っている
- 部署ごとに、似た機能のサービスを契約している
- 無料で試し始めたサービスが、有料契約へ移行している
- 契約担当者が異動し、管理者や更新条件が分からなくなっている
経理担当者は支払先を知っていても、利用実態までは分かりません。利用者は便利に使っていても、契約全体の費用は知らないことがあります。
支払いを確認する人と、利用状況を確認できる人の情報を合わせることが、棚卸しの出発点です。
1.支払明細から、契約しているサービスを洗い出す
まず、会社のカード明細、請求書、口座振替の記録などから、継続的に支払っているサービスを拾います。
月額契約だけでなく、年払いの契約にも注意してください。直近1か月の明細では見つからないため、過去1年分を確認すると年間契約も拾いやすくなります。
支払先の名称だけでサービスが分からない場合は、契約メールや請求書の詳細を調べます。経理の記録だけでは拾えない契約がないか、各部署にも確認しましょう。
一覧は、最初からすべて埋まらなくても構いません。「利用目的不明」「管理者確認中」と残し、誰がいつまでに確認するかを決めます。不明な契約を、その場で不要と判断しないためです。
2.サービス単位の契約表を作る
最初は、Excelやスプレッドシートの共有表で始められます。
項目 | 記録する内容 |
|---|---|
サービス名・契約先 | 正式なサービス名、直接契約か販売店経由か |
利用目的・利用部署 | どの業務で、誰が使っているか |
管理者 | 契約変更や利用者管理を行える人 |
料金プラン・課金単位 | 定額、利用者数、使用量など |
費用・支払周期 | 月額・年額、税込・税別を区別する |
更新日・変更期限 | 自動更新日、解約や人数変更の申出期限 |
判断・次の対応 | 継続、変更、統合、解約、確認中など |
年間契約を月額換算すると、ほかのサービスと費用を比べやすくなります。ただし、月額換算の金額と、実際の支払周期は分けて記録してください。
毎月請求されていても、契約自体は年間契約の場合があります。「月払いだから来月から自由に減らせる」とは限りません。
3.アカウント数と請求対象を突き合わせる
利用者数に応じて料金が決まるサービスでは、契約一覧だけでは十分ではありません。
確認したいのは、次の三つです。
- 契約数: 何人分の利用枠を購入しているか
- 割当数: その利用枠を何個のアカウントに割り当てているか
- 利用実態: 誰が、何の業務に使っているか
例えば、15人分を契約し、14人に割り当てていても、現在利用している社員は12人かもしれません。この場合は、未割当の1人分と、利用状況を確認したい2人分があります。
ただし、差があるからといって、すべてが不要とは限りません。入社予定者向けの枠や、必要なデータを引き継いでいる途中のアカウントも考えられます。
人数で課金されるサービスは、契約表とは別に、利用者ごとの一覧を用意すると確認しやすくなります。
項目 | 記録する内容 |
|---|---|
利用者・アカウント | 誰のアカウントか |
所属・利用目的 | どの業務に必要か |
ライセンス・プラン | 割り当てている利用権の種類 |
利用継続の要否 | 必要、見直し候補、確認中 |
引き継ぐもの | ファイル、メール、管理権限など |
次の対応・担当・期限 | 誰がいつまでに確認・変更するか |
この表にパスワードは記載せず、閲覧できる人も業務上必要な範囲に絞ります。
また、最終ログイン日だけで不要と判断しないことも大切です。年に数回だけ使う業務や、別のシステムとの連携に使うアカウントもあるため、利用者や管理者へ用途を確認します。
4.アカウントの整理と、請求を減らす手続きを分けて確認する
ここで注意したいのが、アカウントを停止・削除しても、同じタイミングで請求が減るとは限らないことです。
ログインを止める操作、ライセンスの割り当てを外す操作、購入しているライセンス数を減らす操作は、分かれていることがあります。契約によっては、人数を減らせる時期も限られます。
例えば、Google Workspaceでは支払いプランによってライセンス数を減らせる条件が異なり、年間/定期プランでは原則として契約更新時の対応になります。詳細はGoogle Workspaceの公式ヘルプで確認できます。
Microsoft 365でも、ユーザーへの割り当て解除と、購入ライセンス数の削減を区別して確認する必要があります。変更できる条件は、契約や購入方法によって異なります。Microsoftの公式ガイドを確認し、販売店経由なら契約先にも問い合わせましょう。
見直し候補が見つかったら、次を確認します。
- データや管理権限の引き継ぎは済んでいるか
- どの操作で課金対象を減らせるか
- いつまでに申し出る必要があるか
- いつの請求から変更が反映されるか
退職者のアカウントは、費用の整理だけを目的に削除しないようにします。データと権限の確認については、退職者のGoogleアカウントは削除していいのか。中小企業が確認すべきデータと権限で詳しく紹介しています。
5.継続・変更・統合・解約を判断する
利用状況が分かったら、契約ごとに対応を決めます。
判断 | 判断の目安 |
|---|---|
継続 | 業務に必要で、人数やプランも実態に合っている |
人数・プランを変更 | サービスは必要だが、利用枠や機能に余りがある |
ほかのサービスへ統合 | 機能が重複し、移行後も必要な業務を続けられる |
解約 | 利用目的がなく、データ保存や連携への影響も確認できている |
確認を継続 | 用途、管理者、データの扱いなどが分からない |
似た機能があるからといって、すぐに一本化できるとは限りません。取引先が指定しているサービスや、特定の部署だけに必要な機能もあります。
統合する場合は、削減できる費用に加え、データ移行や操作の習得にかかる負担も比べます。必要な仕事が続けられることを確かめてから進めましょう。
解約や人数変更の手続きが終わったら、受付メールや管理画面の記録を残します。その後の請求も確認し、予定どおりに反映されたところまで追うことが大切です。
契約時・退職時・更新前に見直す仕組みを作る
一度整理しても、契約や社員が増減すれば一覧は古くなります。毎回大がかりな調査をしなくて済むよう、情報を更新するタイミングを決めます。
- 新規契約時: 利用目的、管理者、費用、更新日を登録する
- 入社・異動・退職時: 利用者、権限、ライセンスの過不足を確認する
- 契約更新前: 利用実態と次期の契約数・プランを見直す
更新前の確認は、契約の変更期限に間に合うように予定を入れます。「更新月になってから確認する」では、申出期限を過ぎていることがあるためです。
経理担当者が支払いを、各部署の責任者が必要性を、サービスの管理者がアカウントと変更条件を確認するなど、役割も決めておきましょう。
社内で用途や契約条件を確認できれば、まずは共有表で整理を進められます。管理者が不明だったり、複数サービスの連携やデータ移行が関係したりする場合は、契約先や外部の支援者と確認する方が進めやすいことがあります。
まずは、使い道の分からない支払いを一つ確認する
IT契約の棚卸しは、支出を一律に減らすためのものではありません。必要なサービスを必要な人数で使い、会社として管理できる状態にすることが目的です。
最初から全契約を整理しようとせず、一つの支払明細から始めてください。使い道が分からないサービスについて、「何に使うか」「誰が管理するか」「何人分を払っているか」を確認します。
その一件を契約表に残し、次の更新前に見直す予定まで決める。それが、用途不明の支払いを増やさないための最初の一歩になります。